ポンプの種類
ダイヤフラムポンプの説明に入る前に、ポンプは、大きく分けて二種類に分類されます。
1.非容積式ポンプ
例)渦巻きポンプ(水中ポンプ)、遠心ポンプ、カスケードポンプなど
2.容積式ポンプ
例)ダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプ、ギヤポンプ、スクリューポンプなど
このように大きく分けて二種類となり、非容積式ポンプは、羽根車(インペラ)を回転させて流体を移送するため、工場やプラントで最も多く使用されているポンプの種類と言われております。
もう一つの容積式ポンプは、今回説明するダイヤフラムポンプが該当します。
容積式ポンプは一定の容積を持つ空間にある流体に対して、往復運動(吸い込んだり吐出したり)や回転運動によって容積を変化させて流体を移送するポンプです。
ダイヤフラムポンプ=注射器
容積式ポンプについて文で説明しましたが、少し言葉が専門的で分かりづらいた為、イメージができやすいものに例えて説明させて頂きます。
健康診断で採血をする時の注射器を想像してみてください。
注射器の上の部分(ピストン)を引っ張ると血が採取され、それと反対にピストンを押すと血が出ます。
この注射器の動きが、ダイヤフラムポンプと同じ仕組みとなります。
注射器はピストンを動かす事によって、液を仕込んだり吐出したりをしますが、このピストンをダイヤフラムに置き換えれば、ダイヤフラムポンプの動作の仕組みとなります。
しかし、注射器は液の出入口が同じですが、ダイヤフラムポンプは下から吸い込み、上からの吐出します。
下の構造図をご覧ください。
逆止弁の役割
ダイヤフラムポンプは、注射器にはない逆止弁というものが入っております。
これがないと液を吸うこと、吐出することもできません。
逆止弁の役割として、ダイヤフラムが引っ込めば上部(吐出側)の逆止弁が流路を塞いで密閉空間を作り出します。
下部の吸込み側の逆止弁は上がるため、液を引っ張ることができ結果液を吸い込む事ができるのです。
その逆も同じです。
ダイヤフラムが出っ張れば、吸込み側の逆止弁が下に行き密閉空間を作ります。
さらに吐出側の逆止弁は上に動き空間ができるため、ポンプに入ってきた液を吐出することができるのです。
脈動が出てしまう
エアダイヤフラムポンプは使いやすいポンプですが、どうしても脈動が発生してしまいます。
ちなみにですが、冒頭で説明した非容積式ポンプはインペラの力で遠心力を起こして流体を移送するため脈動は発生しません
なぜ脈動が出るのか
ダイヤフラムポンプは、逆止弁の上下動作で流路を開けたり閉めたりし、そこでダイヤフラムを用いてポンプ内の容積変化をさせて吸い込み・吐出を繰り返します。
そのため、下図のように1ストロークの間に、吸い込みと吐出を1回ずつ繰り返します。
この動作で液に波のような動きが出てしまう事を脈動と呼びます。
脈動を完全に無くすことはできませんが、軽減や防止することはできます。
方法としては、エアチャンバー・アキュームレータ・脈動減衰器(ダンパー)があります。
ダイヤフラムの動作方法
ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムの引っ込みと出っ張りで成り立っていると説明しましたが、まずダイヤフラムはどうやって動くのか?を順番に説明していきます。
1.ポンプにエアを入れる
まずはポンプにエアを入れてください。
エア駆動なのでエアを入れないと動作しません。エアを入れると、ポンプ内のエアバルブやピストンが入っている駆動部にエアがたまります。
エア駆動ポンプの駆動部のイメージとしては、電動ポンプのモーターと同じ役割です。
この駆動部にエアが入ると、駆動部が左右に動くようになっているため、同時にピストンも左右に動きます。
ピストンが左右に動くので、それに連動してダイヤフラムが引っ込んだり、出っ張ったりを繰り返し液を移送することができます。
2.流体を吸い込む
エアを差し込むことによりダイヤフラムが動き、液を吸い込むところまで説明しましたが、次は液体を吸い込む動作をします。
液の吸い始めは、ポンプ内と配管もしくは、ホース内が空の状態になるため空気が出ます。
そこから、だんだんと液がポンプ内のチャンバ(流体が溜まり、吸い込み吐出を繰り返す場所)に入り、空気と液体が混ざった状態が始めは続きます。
3.移送
そして移送となります。
空気は液体と同時に出ていくため、しばらくすると液体のみ移送できる形になります。
このようにエアを入れる作業のみで、移送できることが多く、大変使いやすいポンプとなっております。
日常点検は必要
他ポンプもそうですが、エアダイヤフラムポンプも日常点検を推奨しております。
点検項目として左記にて確認を行います。
1.ポンプは正常に動作しているか
2.騒音・振動に異常、ポンプの液漏れが無いか
3.ポンプヘッドのネジの緩み、継手に緩みは無いか
また長時間停止する際は、清水を吸込、吐出を繰り返してポンプ内部を十分洗浄することを推奨します。
もちろん、ポンプ内部に入った埃などを洗浄する目的ですが、ポンプ内部のボールがバルブシートに固着して吸い込まない事を防止するためです。
メンテナンスとコスト
ダイヤフラムポンプは部品交換も他ポンプと比べて容易、かつ様々な流体を移送する事ができるため、過酷な環境でも使用されることが多くあります。
そのため、ダイヤフラムポンプは用途が正しい現場・環境だった場合は、ポンプを検討するにあたり、入れなくてはならない存在だと思っております。
ダイヤフラムポンプは、最適なコストパフォーマンスと効率を確保できるポンプです。