ボイラーとエネルギー
ボイラーが身の回りの何に使われていて、どんな働きをしているのかを解説しましたが、いかがだったでしょうか?
本項では、ボイラーの基礎知識、ひいてはボイラーの基本構造や仕組み、関連用語や、性能を表す指標について解説していこうと思います。
さて、ボイラーの基本的な構造を解説していく前に、おさらいがてらもう一度前項で述べたボイラーの定義から確認しましょう。
ボイラーとは、「密閉された容器の中に水などを入れて火や高温のガスで加熱し、蒸気や温水を作り出して他の設備や機器へ供給する装置」と表現しましたね。
この、火や高温のガスから得られる熱エネルギーは、ボイラーの中で水の温度を上昇させて温水を作り出します。
つまり、燃焼によって得られる熱のエネルギーが、ボイラーで得られる温水や蒸気を生み出しているとも言えます。
この「温水」と「蒸気」では生み出されるエネルギーの質や用途が異なっています。
ボイラーが作り出すエネルギーは大きく分けて左の2種類に分類されます。
・熱源…主に温水を作り出す
(例)お湯を作るための熱として利用される
・動力源…膨大なエネルギー量から様々な役割を果たす
(例)発電の為のタービンを回転させる力として利用される
体積膨張のエネルギー
蒸気の持つ特徴のひとつに、体積の膨張があります。
通常の大気中では1kgの水を沸騰させ、全て蒸気に変化させた場合、その体積は元の体積の1700倍になります。
つまり、水が蒸気に変わる過程で体積は膨張し、容器内の圧力が高まり続け、出口を少し開いてやると閉じ込められていた蒸気が勢いよく吹き出す。という仕組みが出来上がるというわけです。
ボイラーで得られる動力源はこういった仕組みで勢いよく吹き出す蒸気にあるといってもいいでしょう。
さらに、沸騰して蒸気を発生し始めた温水は一定の温度までは加熱を続けても温度上昇することはなく蒸発し続け、全て蒸発した後も加熱をし続けると更に大きなエネルギーを蓄える蒸気になります。
このように蒸気を加熱し続けた状態を過熱蒸気と呼びます。
水が過熱蒸気になるまでの変化の過程に関しては、次項の用語の解説と併せてグラフを基に解説していきます。
ボイラーの専門用語
ボイラー水を取り扱う場合や、水を加熱して蒸気を発生させる場合の温度変化と、この時水に与えた熱エネルギーの関係のグラフを利用するときにはボイラー関連で使われる特殊な表現があります。
下の図を基にするとそれぞれの意味がわかりやすくなるので、これから簡単に専門用語を列記していきます。
飽和温度…沸騰が始まる温度(沸点)
飽和水…沸点に達した時の水
湿り蒸気…蒸気に水が少し混じった状態の蒸気
飽和蒸気…沸点の状態の蒸気
渇き飽和蒸気…水分を含まない蒸気
過熱蒸気…飽和蒸気を更に加熱した沸点よりも高い温度の蒸気
顕熱…水を加熱して蒸気を発生させていく過程で、水の温度上昇に使われた熱エネルギー
潜熱(蒸発熱)…水を加熱して蒸気を発生させる過程で、飽和水から飽和蒸気への状態変化に使われた熱エネルギー
比エンタルピ…水1/kg当たりの温度や状態の変化で必要となるエネルギー。熱エネルギー(kj:キロジュール)
ボイラーの性能を確認する
ボイラーについての基本的な事はここまでである程度お話が出来ました。
では、実際にボイラーを選定、比較する際には、各ボイラーが持つ何の数値を参考にすればよいのでしょうか?
ボイラーの性能を理解するために欠かすことが出来ない指標が、
「ボイラーの容量」
「ボイラー効率」
の2つです。
「ボイラー容量」とは、ボイラーが単位時間内に最大どれだけの蒸気を発生させることが出来るかという値です。
この時、単位は「kg/h」または「t(ton)/h」になりますが、温水ボイラーでは熱量/hと表記されるため「GJ/h」や「MJ/h」で表されます。
そしてボイラー容量は実際にボイラーから出た「実際蒸発量」で表される場合と、運転条件の異なるボイラーの容量を正確に比較する事が出来るように表された「換算蒸発量」で表記されている場合があるので、比較の際には換算蒸発量で比較を行うように注意が必要です。
一方で「ボイラー効率」は文字通りボイラーの熱の効率を表すため、この値が大きい程、効率が良い、という事になります。