硫酸の事故例
事故例を学んで活かす
現実に起こった事故例を抜粋し紹介します。
硫酸を取り扱う事の危険性や重大性を再認識し、自身の現場で活用してもらえれればと思います。
情報ソースとして、国立医薬品食品衛生研究所が公開している一覧を引用しています。
配管から漏洩
福島県で業務上取扱者にあたる事業所において、タンクと配管接合部の内面からの腐食により、硫酸146kgが薬品タンクヤード内に漏洩しました。
原因はタンクと配管接合部の内部腐食ですが、事業外への流出も無くけが人もいませんでした。
漏洩後河川へ流出
新潟県当該工場内において、製造原料として使用する硫酸をタンクから製造設備へ送液中、配管のフランジから約50リッター漏洩し、その内約2リッターが施設内用水路を通じて河川へ流出しました。
原因としては、硫酸配管フランジのボルトが十分に締め付けられていなかったため(当該フランジを解体及び切り替えした際に、ボルトの締め付けを施工会社と当該事業所のどちらが行うかの認識の相違によるもの)
人的被害はなく、環境水系への影響についても、魚類のへい死が無い事を確認しています。
タンクが爆発
和歌山県で販売業者にあたる当該工場内において廃硫酸貯蔵タンク内における水素爆発により、タンクの天蓋及び配管が破損し、硫酸が防液堤に漏洩した(流出量は不明)。
原因としては、天蓋の腐食による開孔部からの空気の流入、降雨によるタンクへの水の混入により、生じた希硫酸と鉄が反応し水素が発生。
硫酸をエアコンプレッサーにより圧送による際に静電気が発生し、水素爆発を起こしました。
幸い、人的被害はありませんでした。
配管破裂で負傷
山口県で業務上取扱者にあたる事業所において、75%硫酸タンクに接続した配管の気密工事の際、配管が破裂して75%硫酸が約1.3リッター漏洩。
原因としては、硫酸ポンプ出側の逆止弁取り付けミス、保護具未着用が負傷に繋がりました。
負傷者1名(角膜上皮損傷)を出してしまう事故でした。
設備劣化や工事中に発生
ざっと見る限りでも、ポンプが原因と言う事故は少なく、配管の劣化による漏洩、など設備の劣化によるものが多いことがわかります。
また、工事中の不注意や連絡の行き違い、工程のミスなどによる漏洩事故も多く見られました。
硫酸に関わる設備の定期的なメンテナンスや、メンテナンス時の安全管理などの徹底が必要です。
少量でも漏洩事故を起こしてしまうと大きな問題に繋がる可能性があります。
硫酸設備の設計・更新は充分注意して進めて下さい。
苛性ソーダの事故例
海域へ流出
山口県にて、48%水酸化ナトリウム水溶液貯蔵タンクに付帯した凍結防止用配管から、48%水酸化ナトリウムが約80リッター漏洩。
そのうち約1.5リッターが海域に流出しました。
原因としては、高温下での水酸化ナトリウムとの接触により凍結防止配管が腐食し、約1センチの穴が開いたのが原因でしたが、幸いにも人的被害も環境被害もありませんでした。
ローリーから流出
神奈川の電気めっき業(取扱者)にて、苛性ソーダをタンクローリーから工業所敷地の貯槽タンクに移送中、ローリーのホースが接続していた配管末端からはずれ、苛性ソーダ120リッターが路上に漏洩。
原因としてはローリー接続部の固定がはずれてしまった為であり、健康被害の報告はありませんでした。
作業者が顔面負傷
京都府の業務上取扱者にあたる食品加工会社の貯蔵タンク開閉バルブの破損により水酸化ナトリウム(24%)50~60リッターが付近の水路へ流出し、河川に流れ込みました。
原因としては、施設の経年劣化(バルブの劣化)でした。
この事故により、作業者1名が顔面負傷しました。また周辺住民及び環境被害等はありませんでした。
排水処理設備での事故
福井県の業務上取扱者にあたる事業所内において、総合排水処理で使用する水酸化ナトリウム水溶液受入作業に従事していた際、作業員の手が接続管に接触し、接続短管に亀裂が発生し水酸化ナトリウム水溶液が噴出、作業員にかかった。(噴出量約10リッター)
原因としては、作業者が作業手順の遵守を怠った為。
この事故で作業員1名が顔面および両目に受傷を負いました。
タンク破損、土壌汚染
神奈川県の業務上取扱者にあたる事業所内において、苛性ソーダの貯蔵タンクが破損し、大部分は防液堤により廃水貯留槽に入ったが、上部破損部から一部が隣接工場の敷地(雑草地)に流出し、土壌を汚染しました。
原因は貯留タンクの老朽化です。
健康被害の報告はありませんでした。
設備老朽化が多い原因
硫酸にも苛性ソーダにも共通するのが、設備の老朽化に起因する事故の多さです。
特にタンクの破損のケースは薬液が漏出する量も多く、危険なケースです。
今一度、硫酸・苛性ソーダ設備の点検をお勧めします。