ドロドロ、トロトロの世界を深く見るためには、「緩和時間」というものを理解する必要があります。

緩和時間を理解すれば、液体と固体の区別も理解できるようになります。

 

緩和時間とは?

レオロジーの重要な概念に「緩和時間」というのがあります。

 

緩和時間を定義すると「系が非平衡を乱された時に平衡に戻る時間」とされます。わかりやすく説明します。

 

通常、私たちが道を歩いている時は、空気に含まれる分子をどかして前に進みます。(もちろん意識はしていませんが)

この時に、私たちの背後にある空気(分子)は一瞬空白になります。

 

つまり私たちが移動したことにより背後に真空が一瞬生まれます。

その背後の空白を埋めるため、分子が平衡を保つために移動する、この時間が「緩和時間」です。

 

液体の緩和時間とは?

液体も気体と同じく分子が移動しています。分子の速さは気体と変わりませんが、周囲にたくさんの分子が密集しているため、勝手に飛び回る事ができません。

 

つまり、変形を加えられた液体が平衡状態に戻る時間は、分子の輸送の速さで決まります。

 

このように分子運動で回復挙動が決まるのであれば、分子の運動が非常に遅ければ、系は平衡に戻れません。そのような物質が身近にあります。それはガラスです。

 

ガラスは液体?

ガラスは分子運動が極めて遅い、液体状態と考えられています。

 

人間の知覚スピードに比べて分子運動が遅いと、液体でも個体に見える、という事です。

 

窓ガラスに広く使われているケイ酸ガラスはその代表例です。

またCDの原料であるポリカーボネートや、水槽に使われるいわゆるアクリルも全て「非晶性プラスチック」と呼ばれる高分子流体です。

名前の通り、通常は液体と同様の非晶構造(個体は結晶構造)ですが分子運動が遅すぎて構造が凍結されています。

 

液体と固体の区別

ガラスの例でも説明しましたが、実は「液体か個体か」の区別は、観察者の時間スケールと、物質の緩和時間の関係で変わってきてしまうのです。

 

観察者の時間スケールより分子運動が遅ければ、個体に見えます。

逆に観察者の時間スケールより分子運動が早ければ液体に見えます。

 

これはレオロジー上「デボラ数」という単位であらわされます。

 

このことを教育的に教えようと、ある大学で「コールタール」のピッチを漏斗から垂らす実験を1927年から行っていますが、2000年までにわずか8滴だけが漏斗に垂れたと報告されています。

 

 

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