ポンプを設置し、長く使用しているうちに気泡が出るようになってきた・・・

吸い込み側のタンクが空で空気を吸ってしまった訳でもなく気泡が発生してるのであれば、キャビテーションの可能性があります。

 

キャビテーションとは?

 

キャビテーションを一言で説明すると、液体中に泡が生じる現象のことです。

通常「液体中に泡が発生」と言うと沸騰をイメージしますが、キャビテーションは常温でも気泡が発生する現象です。

沸騰現象とは、液体の蒸気圧(液体から気体へ変わる圧)が外圧(液体の表面にかかる圧)と等しくなることにより液体中に気泡が発生し、沸騰が起こります。

蒸気圧は温度に依存して決まりますが、(水は100℃ですね)気圧の低い富士山の頂上では90℃で沸騰します。

 

それではもっともっと気圧の低い場所ではどうでしょうか?

答えはもちろん、常温でも液体中に泡が発生することになります。

 

流速と圧力の関係

 

ベルヌーイの定理にもありますが、流速が増加すると圧力が低下します。

キャビテーションはその圧力低下が液体の飽和蒸気圧まで下がると発生します。

ポンプはインペラなどを高速回転させ、もしくは往復運動させ、流体にエネルギーを与え移送を行いますが、そのインペラ部分(もしくはポンプケーシング部)にて流速が最速に達します。つまり圧力が一番低くなる箇所となります。

 

キャビテーションが起こりやすい条件としては温度があります。

常温では問題無かった現場でも、60℃や80℃になると液体自体の蒸気圧に近くなるため、キャビテーションが起こりやすくなります。

また、基本的に通常使用においてキャビテーションが発生しないようにポンプの口径は決まっておりますが、吸い込み配管を細くする等、吸込側の圧損が高くなることで、ポンプは送り出そうとしているのに吸い込めない状況(負圧=真空に近い状況=圧力が低い)になるとキャビテーションが発生しやすくなります。ベルヌーイの定理にもありますが、管径が細いほど流速が早くなります。

 

何が問題なのか?

 

ではキャビテーションの何が問題なのでしょうか?ポンプに対してどのような問題が想定されるのでしょうか。

まずポンプ内部で気泡が発生するということは、ポンプが空運転の状態に近くなります。液体が入っている状態での運転を想定しているシール部(メカニカルシールなど)にダメージを与えます。

同時に、気泡が急激に凝縮して消滅する際に、激しい振動や音が発生します。(パチパチ・バチバチという音)この状態ではポンプの揚程が下がる事が考えられます。

その他に発生する被害としては、エロージョン(壊食)コロージョン(腐食)があります。

キャビテーションではごく短時間に気泡が発生し、凝縮し潰れるという作用を行う際に、ポンプや配管の表面を傷つける可能性があります。

これにより、ポンプのインペラやケーシングなどが徐々に浸食され、著しく減肉し腐食してしまうこともあります。

 

予防と対策

キャビテーションを完全に無くす方法は理論上可能です。

・ポンプ吸込部の圧力が高い場所に設置

・大きなポンプでゆっくりインペラを回して送液する

この2点を踏まえればキャビテーションを考えなくて済みますが、経済的な問題と設置スペースなどを鑑み、まったく現実出来では無いのが実情です。

そこで、なるべくキャビテーションを起こさないようにする為には次の点を踏まえ設備を計画します。

・吸込側配管を短くする。

・配管径を太くする。

・インペラや往復スピードを遅くする。

・吸込条件を押し込み条件にする。

この4点を改善するだけで、設備としてキャビテーションの起こりにくい現場となります。

では、順調に運転していたポンプが突然振動・騒音や目視での気泡がありキャビテーションが疑われた場合は、何をチェックするべきでしょうか?

 

前著しましたが、流速は配管が細いと早くなります。この観点からチェックする項目としては

・配管内にスケールが溜まっていないか

・配管内に異物が詰まって流れを阻害していないか

・ストレーナ(フート弁やチャッキ弁含む)にゴミが詰まっていないか

をチェックします。

また流体温度に変化が無いかも確認します。

インバータで回転数制御をしているポンプの場合、キャビテーションにより揚程が下がる→回転数を上げる事で対処している現場を見かけます。

回転数が上がれば流速が上がり、キャビテーションも頻繁に発生しますので、前著した4項目の対策をされることをお勧めします。

なお、キャビテーション対策としてエアベントなどで気体を排気しても、根本的な対策にはなりません。

気体自体を発生させない対策を行う必要があります。

特にキャビテーションの発生が危惧される高温流体の移送においては、自吸では無く押し込みによる移送をお勧めします。

さらに理想的なのは、液中で移送してしまう事です。

高温対応の耐熱水中ポンプなら、吸い込みを意識する必要も無く送液することが可能です。

 

耐熱水中ポンプ JCVHシリーズ

 

本記事は下記の文献・図書を参考に作成されています。

「ポンプの選定とトラブル対策ー現場で起きた故障事例と対処法ー」2014年2月27日 ©外山幸雄 日刊工業新聞社

「トコトンやさしいポンプの本」2016年9月30日 ©外山幸雄 日刊工業新聞社

「新版 キャビテーション」2017年7月1日 ©加藤 洋治 森北出版