安全のための制御

ボイラーはその利用目的から大量の高圧蒸気や温水、更にはそれらを生成するための熱源となる燃焼など万一の際に人体への被害が甚大となる危険な状態の物質を利用しています。

そこで、現代のボイラーには作業者やその周囲の安全のために制御を取り入れたものが非常に多くなっています。

この項では、ボイラーの自動制御の代表例と共に、その制御方法についても解説していきます。

一般的に自動制御は次の2つに大きく分類することが出来ます。

「フィードバック制御」

「シーケンス制御」

 

それでは、まずはそれぞれの制御方法を簡単に解説していきます。

【フィードバック制御】

出力された結果を入力側に戻す事でその値を予め設定した目標値と比較させ、出力された結果がその目標値から外れていた場合、目標値に達するように訂正動作を繰り返し行う制御をいいます。

(例)車のスピードを人が確認して、予め定められた目標の速度にするために、アクセルやブレーキを踏んで運転を続ける

 

【シーケンス制御】

予め定められた順番に従って制御の各段階を次々と進めて行く制御をいいます。

(例)洗濯機でスタートボタンを押すだけで「給水→洗い→排水→脱水→給水→すすぎ→排水→脱水」の動作が自動で行われる

 


ボイラーのフィードバック制御

蒸気ボイラーにおいては、必要な蒸気の量を維持させるために、次のようなフィードバック制御が行われます。

 

1、オン・オフ動作制御

オン・オフ動作とは入・切、つまりオン・オフの操作によって制御を行うものです。

この制御では動作の上限と下限を設定し、それが蒸気圧力の制御であるならば、ボイラー圧力が上昇し、上限値に達したら燃料の供給を停止し、燃焼を止めます。

燃焼を止められたにも関わらずボイラーを使用されれば、いずれ圧力は下がります。

するとここで当初設定しておいた下限値にまで圧力が達すると、再び燃焼を開始し、圧力を上げはじめます。

このように動作幅内でオン・オフにより制御することが可能となります。

 

2、ハイ・ロー・オフ動作制御

 この制御法は燃焼状態を高燃焼域と低燃焼域の2段階で設定し、ボイラーの圧力が高くなった時は30%~50%程度の低燃焼域で燃焼させ圧力が低くなったら100%の高燃焼域で燃焼させ、燃焼状態の制御を行います。

 

3、比例動作による制御

 圧力などのある範囲内で、目標となる圧力と実際の圧力の差の大きさに比例して燃焼量などを増減するように動作させるものです。

 

4、その他のフィードバック制御

 これらの他に、積分動作や微分動作、そして3の比例動作を組み合わせた動作による制御などが行われます。

 

ボイラーのシーケンス制御

ボイラーのシーケンス制御は予め定められた順に各段階の動作を次々と進めて行く事に加えて、定められた条件に対して制御結果が満足いくものであれば次の段階に進むといったチェックが要所要所に入ります。

もし、その過程で満足のいかない結果が出た場合、その段階で制御を中止します。

これを「インターロック」と言います。

決められた動きの道中で異常を感知したら即座にストップするので、非常に安全面に優れます。

さらにインターロックの解除(運転の再開)には、不良原因を調べ、修復後、手動にてリセット(復帰)を行わなければ次に進めない点も安全ですね。

では具体的に、ボイラーではどのようなシーケンス制御が行われるのでしょうか?

 

それでは、ボイラーにおけるシーケンス制御の流れの一例として、点火から定常運転に至るまでの流れを見ていきましょう。

まず、起動スイッチを押します。

すると空気の送給ファンが回転し、火炉の中に空気が送り込まれます。

ここまでの工程の動作状態のチェックで問題なしと判定されると、燃料を注入する回路が開き(燃料遮断弁が開)、燃料が送給されます。

着火が確認されると燃料は引き続き送給され続け、定常運転に至ります。

所定の時間を経過しても着火しない場合、安全スイッチが作動して、燃料は遮断され、動作が中止されます。

 

一定に保つ制御

ボイラーは安定したエネルギーを生み出すために運転そのものの制御に加え、圧力、温度、水位、燃焼状態をそれぞれ一定に保つための制御も行われます。

圧力や温水はフィードバック制御にて、オン・オフ式や比例式で、水位はフロートスイッチによるオン・オフや電極による通電・非通電による制御を、そして燃焼状態に関してはフィードバック制御のハイ・ロー・オフ動作制御や、シーケンス制御のインターロックを各所に複合的に組み込むことで安全かつ一定に保ちながら運転することが実現しています。