よく見る単位、固有名称単位系
第一章、二章でSI単位の基本と応用をみてきましたが、ここからは前2種とは全く別の名称
用途として設定されている【固有名称単位】について解説していこうと思います。
本章では普段の会話や打ち合わせ等に頻繁に出てくる単位が多く登場します。
流体機器に限らず、多くの製品の選定に知っておくべき単位が多いのもこの固有名称系を使った単位であることがほとんどです。
電気の単位は大きく分類すると
【V】ボルト…電圧
【A】アンペア…電流
【W】ワット…電力
の3つの単位が基礎となっています。
まずは固有名称単位である電圧・電力の単位について解説していこうと思います。
【V】電圧・ボルト
まずは電圧(Ⅴ)ボルトから見ていきましょう。
電圧と一言で言っても、電位差や起電力などの意味合いも持つ単位で
定義は1Aの電流が流れる導体の間で消費される電力を1Wとしたときの電位差を1Ⅴとしています。
この電位差=電気を押し出す力となるので、電気の性質上電圧が高いほど多くの電気が流れるという事になります。
一般的に家庭用の電圧は100Ⅴ工場などの生産機械には200Ⅴ以上が使われています。
機器点検の際に「テスターなどを使って電圧(V)をみている」と思っている方も多いかと思いますが
電圧を測るという行為をしている際には実は、テスター側では電位差を計測することで数値化しています。
では、電位差とは何でしょうか?
わかりやすい例として車のバッテリーを例にあげます。
12Vのバッテリーがあるとします。
これはマイナス側の0Vと、プラス側の12Vに対して双方の差が12V分あるという事で電気が流れます。
もっとわかりやすくいうと、水に置き換えると覚えやすいのではないでしょうか。
高いところから低いところへ流れる水と同じで、電位も高いところから低いところへその差分の電気の回路を作ります。
異電圧という言葉もよく耳にしますが、標準電圧である100Ⅴ/200Ⅴと異なる380Ⅴ/440Ⅴなどの特殊な電圧の意味です。
異電圧仕様は特殊仕様であるが故に敬遠されがちですが、大容量の負荷がかかる事が余儀なくされた場合や
海外での機器仕様の場合は400Vなどの異電圧仕様が選定されます。
エイチツーの耐熱水中ポンプは異電圧仕様にも通常短納期対応です。
【W】仕事率・ワット
電気の仕事率の単位としてWが使われるワットですが、単位時間当たりのエネルギーと定義されたものを指します。
一般家庭では最も目にする電気系統の単位となりますね。
Wは電力、仕事率、工率の様にあらゆる意味づけがされている珍しい単位です。
身近なところでは、電球の60w、100wや、電子レンジで「500w600wで何分加熱してください」の
表示~動力を扱う技術的な分野では工率として使われます。
いずれも意味合いは同じものですが、時と場合で用途が変化する万能単位です。
最近ではLED電球の登場で、電球は光束の単位であるlⅿ(ルーメン)で表示されることも多くなりましたが
LED電球であっても、元来のW単位を採用することによって、白熱電球に換算して消費者が明るさを
推定できるようにわざと使っているケースもある程です。
Wの意味合いとしては、単位時間当たりのエネルギーとありますが、要は対象の機器が消費する電力エネルギーを意味しています。
【Ω】電気抵抗・オーム
電気抵抗の単位はオーム(Ω)で表され、電流の流れにくさを表した値となります。
ここで中学生の時に習ったオームの法則のおさらいです。
オーム(Ω)=電圧(Ⅴ)÷アンペア(A)
この方式では1ボルトの電圧をかけたときに1アンペアの電流がながれるような抵抗が1オームであることを指しています。
電気抵抗(Ω)とだけ聞くと、そもそもそんなものが必要なのか?と単純な疑問が浮かびます。
抵抗をわざわざかけなければ、もっと効率的に電気が使えるのでしょうか?
電気は水をイメージする。先ほども出てきましたが、このイメージは電気抵抗でも同じことが言え
いわば配管や水路とよく似た構造です。
水の流れを制御するには、高低差やバルブなどで流量を調節するなどの方法が上げられるように
電気抵抗値によって、電流や電圧を制御する役割があります。
A点とB点に電圧を加えただけでは電流は流れず、この2点を抵抗無しで繋げると瞬く間に膨大な量の電流が流れ込み
回路はショートしてしまいます。
2点間に抵抗を加えることで初めて一定の電流を流すことが出来るというわけです。
電圧を一定にした場合は抵抗値によって必要な電流を回路上に得ることが出来ます。
また、電気抵抗と似た意味で使用されるコンダクタンス(S)はジーメンスと読む単位がありますが、
(Ω)・・・「通りにくさ」
(S)・・・「通りやすさ」
に着目したものです。
【Hz】周波数・ヘルツ
光の単位と言えば、前述したcd(カンデラ)や電球で使われるW(ワット)などが上げられますよね。
では何故唐突にそんなことをいったかというと、電圧や電流値などと一緒に表示されることが多いHzは
電気の単位ではなく、正確にいうと光の単位だからです。
周波数の単位である(Hz)ヘルツは波の性質を持っており、一秒間に繰り返す振動の数を表します。
光は電磁波の一種である事から、ヘルツ数は、電気ではなく光の単位に分類されます。
[ Cycle per second ] や[ rotationsper second ]の意とされます。
Hzはモーターの回転数を広義の意味とする(rpm)と関りがあります。
下記ヘルツの図示でもわかるようにHzは波の基本要素に結び付けて理解するとわかりやすい単位です。
周知の事実ですが、日本の地域の周波数は50Hz/60Hzに分類されています。
山梨県~静岡県を流れる富士川と新潟県から南下する糸魚川を境にして分けられ
これは電力会社発足当時の発電施設の輸入先が米国(60Hz)
と欧州(50Hz)が違った事から、その名残を残したまま現在に至ります。
全国のヘルツを統一しようとした場合は国家予算で収まらない程の
とんでもない費用がかかる事もあって、全国のヘルツの統一が行われるのはしばらく先となりそうですね。
「インバーターで制御する。」とよく聞きますが、インバーター制御にはここまでに見てきた単位で説明が可能となります。
インバーター制御は主に、交流電源によって電動モーターの速度制御を行うことを言いますが
この時のモーターの速度の変更に大きく関係しているのが電圧(V)と周波数(Hz)によるものです。
インバーターとは、もともと「直流電力を交流電力に変換する回路」とされていましたが
現在は平たく言うと「電力変換装置」として広く扱われています。
周波数を制約されることなく対象の機器スペックを制御しながら使用することで
ポンプの回転数の変更による流量調整が可能で、その他の電動機に多く使用されます。
周波数は回転数の基となるので、それを制御できるとなれば対象の機器の性能が可変となり
より希望に近い制御が可能となります。