防爆構造の種類

 

電気機器の防爆構造は、各種のものが国際的に規格化されており、どの防爆構造を採用するのかは、「設置すべき危険場所と分類区分、電気機器の種類及び、着火源の危険レベル、保全性、コスト面」を考慮して決定します。

 

【d】耐圧防爆構造

耐圧防爆構造は、特別な性能を持たせた容器の中に着火源となる電気機器を入れ、たとえ該当容器の内部で爆発を生じても、容器外部には爆発が及ばないようにしたもの。

 

この構造ではその容器の性能として、必要とされる要素が2点存在します。

①内部爆発に十分耐える強度を有すること

②「すきま」のある接合面から出る火炎により、容器の外部の爆発性雰囲気には着火しないこと

これらの性能は、実際に爆発強度試験及び爆発引火試験で確認されます。

すきまのある接合部には、平面接合面、いんろう接合面、円筒接合面などがあり、それぞれの寸法は「すきの奥行き:L」と「すき:W」の名称で構造規格または、防爆指針2008の中で定められています。

耐圧防爆構造では、容器が性能を満たしていれば、内蔵する電気機器に制約が無いので、理論上どのような電気機器にも適応ができます。しかし、大型の電気機器の場合はコストや重量の面で検討が必要になります。

また、容器内の爆発で内容物が破損し、電気機器としての機能が失われることがあるので、プラントの安全運転に関係する電気機器などには適用を控える必要があります。

図1にもあるように、電気機器の容器の外部から※1爆発性雰囲気がすきま(接合面)から内部に侵入し、爆発した場合に容器は圧力に耐える必要があります。

また、内部の爆発時に発生する炎は、容器各部の接合面を通じ外部に逸走するので、外部に存在する爆発性雰囲気に着火する恐れが十分にありますが、接合面の寸法、「すきの奥行き:L」と「すき:W」を適切に設計されることで着火を防止する事を可能としています。

すきの奥行(L)を一定値(25mm)に保ち、すき(W)のみを小さくしていくと、着火が生じないすきの最大値を得ることが出来ます。

このすきの大きさを「最大安全すきま」または「火炎逸走限界」と呼びます。これらの値は、ガス蒸気の種類によって異なるため、ガス蒸気の爆発の激しさを相対的に比較できる1つの指標にもなります。

また、この値は構造規格と防爆指針2008ですきまの区分に差があります。

耐圧防爆構造では、容器の強度及び、火炎逸走防止の役割を有する接合面等が主な点検保守の対象となります。

容器壁は腐蝕や変形、破損がないか、容器を組み立てる締め付けボルトや座金等も、腐蝕などが無いかを点検する必要がありますが、とくにボルトについては容器内の爆発を考慮した仕様となっているため、適正トルクで締め付けを行う必要があります。

また、容器の接合面についてもすきが大きくなりすぎない様、点検での状態を鑑みて、取り換えや整備を行います。

※1ガス蒸気が大気と混合したもの

 

【f】内圧防爆構造

内圧防爆構造は、着火源を有する電気機器または部分を容器で囲み、その容器の内部に空気、窒素などの不燃性ガス(保護ガス)を加圧して満たすことにより、外部の爆発性雰囲気と着火源を隔離したもの。

 

構造規格で内圧防爆構造の容器に要求される主な性能は、

①保護ガスの漏洩を少なくすること

②保護ガスの内部圧力に耐えること

③内圧が所定の値未満に低下した場合に作動する警報または通電停止の装置(保護装置)を備えること

以上の項目です。

内圧防爆構造では適用する電気機器に制限がありませんが、保護ガスの供給設備および保護装置が必要とされるので、小型の電気機器単体への適用は現実的ではありません。

一般的に、耐圧防爆構造の適用が困難な大型の電動機、分電盤などに適応されます。

また、内圧防爆構造には、保護ガスの供給方式によってダクトを設ける「通風式」や、気密構造をとった「封入式」、保護気体を完全に密封する「密封式」があり、容器内部にガス蒸気の放出、漏洩の可能性がある電気機器の場合は、保護ガスを用いて十分に希釈して爆発限界以下の濃度とする「希釈式」があります。

内圧防爆構造の主な点検保守としては、容器、保護ガス供給装置、保護装置があげられます。

前述した①~③を維持しなければいけない為、容器を構成する筐体、パッキン、締め付けネジ、配線の引き込み部の損傷や、緩みなどの重点的な点検が必要です。

保護装置は、通電前に通風管と容器の内容積の5倍の保護ガスで掃気することや、内部圧力の低下を感知した際の警報や通電停止機能が維持されているか、といった細部まで保全調査が必要になります。

 

【o】油入防爆構造

油入防爆構造は着火源となりうる部分を絶縁油に浸すことによって、着火源と可燃物の共存を避ける原理の防爆構造です。

 

油入防爆構造では、絶縁油が共存回避機能の他、電気絶縁・冷却作用などの役割も果たしています。

電気機器の容器は、絶縁油が外部からの湿気等により汚損されないように、全閉構造とする必要があります。

油入防爆構造は、油(一般的には鉱油)という可燃性液体を使用するので、取り扱いや保守などに難点があります。

このため、実際の電気機器に適用される例は極めて少なく、変圧器にわずかに適用されている程度です。

油入防爆構造では、油面計が必須になります。

 

【e】安全増防爆構造

安全増防爆構造は、正常時の運転動作時には着火源とならない電気機器を危険場所で使用するために考案された防爆構造です。

 

先ず初めに、安全増防爆構造の対象となる正常時の動作時には着火源にならない機器とは、正常時には電気火花を発生せず対象とする爆発性雰囲気に着火する高温を生じない電気機器を指します。

安全増防爆構造は対象となる電気機器の種類は制限があるものの、日本では一番多く流通しているとされています。

産業工場などの様々な環境条件下で、正常時には着火源とならない電気機器でも、長期間にわたり使用し続けた場合に、絶縁不良、過熱などに基づく電気火花、高温などの着火源を生じる恐れがあります。

そこで、着火源を長期間にわたり使用し続ける場合に、絶縁、温度上昇及び、外力に対する機械的強度に安全度をできるだけ増加して設計・製作されたものが、安全増防爆構造とされます。

仮に安全度を増加できない仕様の電気機器の場合は、たとえ通常は安全で着火源にならないとしても、安全増防爆構造以外の防爆構造の適応を検討する必要があります。

また、安全増防爆構造の電気機器の容器に対する性能として、構造規格の場合にあたっては原則として充電部分は全閉構造とするか、防爆指指針2008の内部に裸充電部分がある場合は、IP54以上の保護等級を、内部に絶縁された充電部分のみがある場合は、IP44以上の保護等級を採用します。

安全増防爆構造は、機器が正常に運転されていない場合のみ(故障時のみ)防爆性が保証されるので、使用にあたっては正常運転を心がけることが、一番の注意点になります。

 

IP保護等級と記号

 

IP保護等級とは、電気機器における容器の保護等級(容器によって、外部から内部に異物等を侵入させないことにより、内部にある充電部などを保護するための分類)を示す記号で、このIP文字に続く2桁の数値の組み合わせ(例:IP54)で、保護の度合いを表しています。

IP保護等級は、国際電気規格(IEC 60079)及びJIS C 0920によって次のように定められており、IP-(第一記号)(第二記号)で表します。

安全増防爆構造における保守点検では、本構造は正常運転中に着火源となる火花・過熱を生じないことから、第一類危険箇所及び第二類危険箇所での使用が認められています。

これらが生じる原因は、主に絶縁劣化と同線接続部の緩みがあげられるので、その点検・保守が重要とあります。

絶縁劣化は、電気機器の容器内部に水分、ほこりなどが侵入し、絶縁低下、不良を生じた結果、短絡、地絡、トラッキングなどにより火花や過熱を生じてしまうため、IP保護構造が適応されます。

しかし、長期間の使用によりIP保護構造の機能低下がみられることがあるため、パッキンの劣化や外部導線の引き込み部や、ケーブルグランドの取付け部の緩みを点検する必要があるということになります。過負荷保護装置がついている電気機器については、その機能についてもチェックする事もお忘れなく。