似て非なるもの
スラリーというワードは排水や生産ラインの液の状態を表す際に用いられますが、排水ではスラリーの他に語感が似た用語として使用されるスラッジ・スカム・SSなどの用語が存在ます。
理解を誤ると、その流体の移送のためのポンプの選定や、それに付帯する設備の選定を誤りかねない為、それぞれの用語の理解を深める必要があります。
それでは、スラリーを中心に置いて各用語がどういった物を指すか、スラリーとはどう違うのかを一緒に学んでいきましょう。
スラッジとスラリー
スラッジとは、水処理において、沈殿、濃縮などの固液分離操作を行った後に排出される汚泥のことを言います。
泥状の沈殿物をイメージするとわかりやすく、排水や洗浄液中に混在していた残渣物の塊です。
また、水処理は主に、処理コストの軽減のため行われ、工場の設備規模によっては、水処理設備を完備している工場も多くあります。
固液分離操作とは、コストを軽減する為に行われ、水処理において、最初に行われる操作になります。
主に、固形物と水を分離させる操作を行い、直接汚水中の夾雑物をスクリーン等を用いて分離する方法と凝集剤を添加して濃縮・脱水を行うパターンがあります。
スラッジはこれまでの通り、粒子径レベルの話ではなく、液と混在物が分離している状態を指します。
スラリー液はスラッジとよく同意義として使用されますが、実際には液中に個体の粒子が混ざっている液の事を指す為、意味が異なります。
また、スラッジは排水処理の過程で生成されるケースがほとんどの為「回収して処分するもの」としての見方がされます。
スラッジは腐敗しやすい有機物を含む事もあるため、その際クーラントタンク内に放置されたスラッジは臭気の強い沈殿物となります。
スラッジの回収は現場環境の改善にも繋がります。
沈殿物、残渣物として回収されるスラッジはほぼ固形のような形状をしているので、流動性がほとんどないので、排水と混在している状態でフィルターやストレーナー、排水を移送するポンプなどによって、
回収、濾過が可能です。
各工場が取り扱う製品によって生成されるスラッジは異なりますが、主に鋳物、アルミ、ステンレス、樹脂、鉄などがスラッジの一般的な例です。
スカムとスラリー
スカムとは、排水口や排水貯留槽などにできた汚水や汚泥などから発生するガスによって水面にできる分厚い層のようなものです。
懸濁物質や繊維、油や炭酸ガスなどが浮遊物としてスポンジの膜の様な見た目になる事が多くあります。
もともと汚物、糟を指すスラングとしてスカムが用いられているとされています。
腐敗ガスによって水面に浮上したカスは悪臭を放つため、定期的にひしゃくなどで人為的に回収されていましたが、スカムを回収するポンプや装置などにより、簡易的にスカムの回収ができるようになりました。
浮上するスカムや工業排水などによくみられる浮上油は水中ポンプに浮きが着いた回収機器が水面に浮いたまま浮上するそれらを回収するので、後段でろ過が可能になります。
また、浮上油は周辺機器が発生させる加工熱で空気中に飛散し、オイルミストとして分散してしまうことで作業者の衣服などに悪臭がしみ込んでしまうケースもあります。
表面仕上げとして用いられる加工工程であり、金属のみならずプラスチックや木材などを研磨加工する事もあります。
精度や美観が求められる製品に用いられますが、この際に研磨対象と研磨機材の潤滑・性能向上のために研磨剤が使用されます。
この研磨剤は、液状で用いられることが多く、砥粒粒子単位で細かくし、液に分散させたスラリー状の研磨剤です。
機械研磨でスラリー状の研磨剤を使用するメリットとして、安定した注入量の確保や、広範囲への効率的な塗布が可能である点が挙げられます。
人工的に塗布する事を鑑みても、スラリー状であると容器での販売がしやすい点や、持ち運びや使用が容易である点が挙げられます。
濃厚なスラリー液は非ニュートン流体の特性を持つため、人の手で容器を押し出すと、任意の量で調節できるといった点も、スラリー状ならではのメリットと言えるでしょう。
摩耗性スラリー
研磨剤は砥粒が含まれるため、その排水で生じるスラリーは摩耗性があります。
ポンプ等で移送する際、ポンプの接液部に押し当てられる際に少しずつポンプ駆動の要となる部分に損傷を加える事もあり、故障の原因となります。
また、砥粒に限らず、スラリーに含まれる個体粒子が硬質である場合には、その移送を行うポンプの選定には砥粒と同じく、注意する必要があります。
高粘度流体などを移送する際に使用される一軸ねじ構造のポンプなどでは、その移送構造から接液部のステーターが徐々に摩耗してしまう事で、液の移送が困難になり、十分な能力を発揮できなくなります。
移送したいスラリーに摩耗性がある場合は、ポンプの移送構造上、接液部に、ある程度の隙間が存在する構造の物を選定することを推奨します。