身近なスラリー
スラリーを移送する際のポンプの選定には注意する点はいくつかあります。
① スラリーに粘性はあるのか
② スラリーに摩耗性があるか
③ 固形物は含まれているか
など、スラリーと言えど多くの種類や状態がある為、スラリーの特徴をユーザー、メーカーともに理解する必要があります。
スラリーに適合するポンプタイプの一つにダイヤフラム構造のポンプがあります。
ダイヤフラム構造は、スポイトを元に考えるとイメージが容易です。
スポイトは、柔らかいつまみを指先で押し潰し、吸い上げたい液に先端をつけて指を離すと、液を吸い上げ、液が充填されたつまみを押し込むと、先端から液を排出します。
このスポイトの原理がダイヤフラム構造の基本原理となり、スポイトの出入り口を別口に設けた構造がダイヤフラムポンプに用いられています。
この三段階の動きによって、移送されるのですが、吸い込みと吐出側のボールが逆止弁の役割を担っています。
吸い込み時も吐出時も、このボールを液が通る際に、数ミリの隙間ができます。
この隙間があるおかげで、接液部や駆動部がスラリーに含まれる個体粒子の干渉を受けにくく、隙間の径(異物通過径)によって、固形物が混入するスラリーでも移送することが可能です。
ポンプサイズが大きくなればボールやケーシングも大きくなるため、吐出時の隙間も大きくなり、より大きな個体を移送できます。
ダイヤフラム構造のポンプはその構造から自吸性能(液を自力で吸引する)を持つため、吸入側のノズルをスラリー層に差し込む事で、掃除機の様にスラリーを回収する事が出来ます。
また、構造上高粘流体も移送する為、スラリー移送に万能なポンプです。
一軸ねじポンプ
スラリーはドロドロ、トロトロとして粘度が高い事が多い流体です。
その際の粘度は数十万cpまで記録する事もあり、傾けても少しづつしか動かない、力を加えないと動かないレベルの粘度の際は、一軸ねじ構造のポンプに落とし込みにて移送が可能です。
理論上100万cpまで移送が可能で、容積型ポンプである為、半固形物でも移送が可能です。
ローターとステーターで作られる空間を使って液を移送し、その間は精密なクリアランスで製作されているため、摩耗性スラリー等の移送には要注意です。
ローターとステーターに押し込まれた摩耗性物質が、ステーターを徐々に削り、空間ができる事によって、うまく液を移送し無くなる危険性があります。
逆に柔らかい粒子が含まれるスラリーであれば、すり潰しながら移送を行う事ができます。
その他にも、容積型とよばれる構造のポンプは、その構造上スラリー移送に向いているポンプが多く存在し、チューブポンプ、ロータリーローブポンプ、などがあります。
後段処理
工場では循環ろ過させるなどして工業用水を再利用するシステムが組まれることがありますが、不純物であるスラリー液やスラッジはろ過・回収する必要があります。
スラリーやスラッジをポンプで移送した後にフィルターなどを通して懸濁体を濾す作業を行う事で、産廃コストの削減などにも繋がります。
フィルターには様々な種類がありますが、粒子径が大きい場合や、スラッジが含まれる場合は、バッグフィルターなどを用て、粗い粒子のろ過を行います。
これよりも細かな粒子をろ過する際は、筒状のフィルターカートリッジを使用して、微細な粒子をろ過する事が出来ます。
液中に油が分散してしまっているエマルジョン液には、エマルジョン化した油分を除去するフィルターもあり、使用用途に合わせて選定を行う必要があります。